厚生労働省は5月7日、抗ウイルス薬「レムデシビル」を新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認しました。
審査期間を短くする特例で承認し、原則、重症患者に投与するとのことです。
新型コロナウイルスの待望の治療薬となれば、事態の終息や医療崩壊の回避の為には大きな朗報ではあるのですが、抗ウイルス薬「レムデシビル」とは一体どんなものなのか。
今回のテーマは
6児パパが独自でリサーチした「レムデシビル」について詳しく解説していきます。
新型コロナウイルスの治療薬が異例のスピード承認
新型コロナウイルスの治療薬として期待される「レムデシビル」は、アメリカの製薬会社「ギリアド・サイエンシズ」の日本法人から5月4日に厚生労働省に承認申請が出され、専門家らが出席する厚生労働省の審議会が安全性や有効性などについて議論した結果、申請から3日間という異例の早さで承認されることなりました。
元々「レムデシビル」は、アフリカで流行したエボラ出血熱の治療薬として開発が進められいましたが、新型コロナウイルスの治療にも効果が期待されていて、アメリカでは今月1日、重症患者に対する緊急的な使用が認められていました。
過去の「治療薬特例承認」の事例
緊急対応が必要な際に他国で販売されている薬を日本国内で臨床試験なしで承認する「特例承認制度」があります。
特例承認制度の適応は、2009~10年に新型インフルエンザが流行した際に、英国とスイスの企業のワクチンがこの制度で承認されて以来、史上2度目。
世界初となる製造販売承認
ただし「レムデシビル」は、治療薬として使用許可を判断するアメリカの食品医薬品局(FDA)から、新薬としての正式な緊急時使用許可の承認を得ているわけではありません。
今後の正式な臨床試験の結果提出までの暫定措置であるために、特例承認とは言え、「レムデシビル」の正式な製造販売承認は日本が世界初となるようです。
レムデシビルって?
製薬元
「レムデシビル」は、アフリカで流行し、最大で致死率70%を超えるエボラ出血熱の原因となるエボラウイルスに効果を示す治療薬としてギリアド社と米陸軍感染症医学研究所(USAMRIID)が共同開発した化合物です。
なぜ新型コロナウイルスの治療薬となったのか?
エボラウイルスと新型コロナウイルスには性質上の次の類似性がありました。
RNAウイルス
ウイルスはヒトの細胞内に遺伝情報を送り込んで、ウイルスの数を増やしていきます。
遺伝情報には
Ⅰ.デオキシリボ核酸(DNA)
Ⅱ.リボ核酸(RNA)
の2種類の形があり、今回の新型コロナウイルスもエボラウイルスも同じRNAウイルスだった為、RNAウイルスに有効性のあるレムデシビルはウイルスの増殖にストップをかける効果が期待されているのです。
レムデシビルでウイルスが死滅するわけではない
レムデシビルはエボラウイルス、新型コロナウイルスのいずれも直接殺すわけではありません。
あくまでウイルスの数が増えないようにする薬です。
ヒトの免疫機能が復活して、残るウイルスを排除するまでの間の、ウイルスの増殖を防ぐ治療薬なのです。
臨床試験
アメリカ国立衛生学研究所(NIH)傘下である国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が主導して、世界68施設の重症新型コロナウイルス感染症患者1063人を登録した臨床試験の予備的解析結果が4月29日に発表されました。
臨床試験は医師や患者の先入観が入り込むのを防ぐ厳格な二重盲検という形式で、レムデシビルと偽薬をそれぞれの患者グループに最大10日間静脈注射し、主に患者の回復(退院あるいは通常の日常生活に戻れる)までの期間を評価する形で行われたそうです。
発表された結果が以下の通りです。
<回復までの期間>
レムデシビル群 - 11日
偽薬群 - 15日
<患者の死亡率>
レムデシビル群 - 8.0%
偽薬 - 11.6%
数字だけ見れば大きなインパクトはないかもしれませんが、レムデシビルの方が良好な結果が現れたようです。
期待と懸念
臨床試験から、死亡率は大きく低下させることはありませんが、レムデシビルは回復までの期間を31%短縮させるという結果が現れました。
このことから、レムデシビルの期待と懸念をまとめてみました。
<期待>
NHK調査によると、日本国内の新型コロナ対応ベッドの合計は約1万2500床で、新型コロナウイルスでは感染者の約2割が入院が必要な重症に至ると言われています。
他国(英仏独伊の4か国)では、既に感染者数10万人以上に達しているなか、日本が同様の状況になれば重症者は単純計算で約2万人になり、他の病気の患者のための入院ベッドまでが不足し、医療機能全体に大きな影響が及ぶ為、新型コロナウイルス患者の早期回復・入院期間短縮は大きな意味があるのです。
<懸念>
完治に至るにはヒトの免疫機能が重要となる為、重篤にある患者や免疫低下疾患を抱える患者にとってどれほどの効果があるのかが懸念されます。
製造元のギリアド社の説明では、製造能力向上に努めたうえで2020年10月までに50万人分の生産量を目標としているようです。
しかし、現在、レムデシビル投与の対象となる世界中の感染重症者の約20万人分が不足している状態となり、重症者ですら供給が完全には追い付かない可能性がある為に、軽症者も対象にすることは物理的にも不可能な事態も考えられます。
レムデシビルの副作用は吐き気や便秘、急性呼吸不全た多臓器不全や敗血症など様々な報告があり、リスクも伴います。
特に治療が必要ではない無症状者・軽症者に投与して、このような副作用に見舞われれば、医学的な問題もあるのではないでしょうか。
製薬元のギリアド社によれば安定供給までは無償で提供するとのこと。
しばらくは患者負担はゼロとなる為、新型コロナウイルスの治療として、入院費とともに公費扱いにしてくれる模様。
ただし今後、高額療養費制度が適用される可能性もあるかもしれません。
入手ルートと治療できる場所
現在(5月8日時点)、レムデシビルは治験段階・緊急の特例での使用が認められた薬です。
注射・点滴で投与する薬である点や、多くの副作用も報告されている背景から、薬局やドラッグストアでは入手できず、国の管理下にある為、限られた新型コロナ患者を受け入れられる病院(感染症指定医療機関)で使用される見込みです。
今後、回復状況や副作用の状況が良ければ、全国の病院にて使用が可能になると思われます。
その他、開発・研究中の治療薬
抗インフルエンザ薬「アビガン」(富士フイルム富山化学)
抗インフルエンザ薬としては有用性が認められ、条件付き承認・備蓄が行われている薬。レムデシビル同様にウイルスが細胞内で複製・増殖するのをさまたげる薬で、世界各国で治験が行われています。、安倍首相は「月内承認を目指したい」と表明。レムデシビルに続く承認が確実視されています。
イベルメクチン
口から飲む経口駆虫薬(寄生虫を殺したり、体内から追い出す薬)だが、海外の研究により、新型コロナウイルス増殖を抑えたとの報告があがり、2020年5月6日、承認に向けて治験を実施していくとの発表。ノーベル医学生理学賞の大村智特別栄誉教授が開発に貢献。
フサン
膵炎(すいえん・すい臓の炎症)の治療薬。政府はこの薬についても今後観察研究するとのこと。
「オルベスコ」(帝人ファーマ)
ぜんそく向けの吸入ステロイド薬。クルーズ船患者への効果が報告され、研究が進んでいる。
関節リウマチ薬「アクテムラ」(中外製薬)
重症患者向けに炎症の原因物の働きを阻害する働きがあり、月内に治験開始が見込まれ、同社は「年内申請を目指す」としている。
回復患者の血しょう抗体(武田薬品工業)
回復患者の血しょう中の抗体を活用して、新たな新薬の開発の為、年度内の治験開始を目指している。
感染抑制能(中和能)を有するVHH 抗体(北里研究所)
VHH 抗体の新型コロナウイルス粒子への結合と、中和活性の有無を確認することで感染抑制能を評価。その結果、VHH抗体を添加した場合に新型コロナの細胞への感染が抑制されていることが確認できたと同研究所が発表。*VHH抗体とは、ラクダ科動物由来の抗体で、一般的な抗体と比較して10 分の 1の大きさとなり、高い安定性や微生物による低コスト生産が可能なことから近年注目を集めている。
まとめ
未知のウイルスに研究者たちが必死に立ち向かって、今この瞬間も治療薬の研究に励む姿に敬意と感謝の気持ちを抱きます。
新たな新薬によって、今後、危惧されていた医療崩壊の危機への光明も差し込むことができるかもしれません。
しかし、今後、国内で治療薬として活用される見込みのある「レムデシビル」も「アビガン」も、新型コロナウイルスを完治(死滅)させる薬ではありません。
あくまでウイルスの増殖を抑える効能があり、完治の為にはヒトの力(免疫力)が必要になります。
私たちが今できることは規則正しい生活習慣を日々意識付けて健康を維持しながら、感染予防に努め、この事態を乗り越えていくことに変わりないのです。
STAY HOME
自宅で過ごすことが、自身や他者の感染拡大を防ぐ最も有効な対策です。
とはいえ

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